2014年 08月 29日
久しぶりに遭遇した本番中の「事故」
久しぶりに突発的な「事故」に遭った。
伴奏ピアニストが遭遇する本番中の「事故」で多いのは、
①ピアニストの左隣に座っている譜めくりの方に
誤ってページをめくられてしまう。
②暗譜で演奏している独唱者(独奏者)が緊張のあまりに
ピアノの前奏或いは間奏などの後での「入り(いり=演奏開始箇所)」を間違えたり
打ち合わせておいたダルセーニョなどの反復指示の実行を間違えてしまう。
③突然ステージ上の空調機器から風が吹いてきて
譜面台上の楽譜が飛ばされてしまう。
などなど…。
上記の何れも今までの演奏活動の中で何度も経験済みではあるが、
今回遭遇した「事故」は③の「楽譜飛散」。
今夜の本番は運営上の都合であろうか
リハーサル無しでのぶっつけ本番。
ピアニストにとってリハーサルを与えられない本番ほど
恐いものはない。
自分の楽器を持ち運んで本番に臨む事が出来る弦楽器奏者や管楽器奏者とは違い
ピアニストは日々弾き馴れた自分の楽器で本番に臨むことが出来ないため
精神的安定を得るためには本番前のリハーサルで
ホールのピアノを入念に試弾してそのピアノに慣れておかなくてはならないのだ。
開催主の御慈悲て本番前にピアノに触れられたのは
演奏曲の冒頭小節数にして8小節、
時間にして僅か30秒足らずのみではあったが
それでもピアノの椅子の高さの調節の仕方の確認、
ステージ上の空調機器の風が強過ぎて譜面台に置いた楽譜を飛ばす危険性がないか、
鍵盤の整備の状態やペダルの状態をざっとでも確認することが出来たので、
全くピアノに触る事なく本番に臨むよりは遥かに安心感を得られた。
しかし曲がクライマックスを迎える直前でそれは起きた…。
本番当日は午前中から気温35度を超す酷暑日で
ホールの中も聴衆の熱気で暑かった…。
突然ステージ上の空調機器から強い冷風が吹いてきて
譜面台上の楽譜を揺らせたが、
幸い休符で数秒間が空いていた左手でとっさに楽譜を建て直し演奏を中断させることは免れたが
曲が左右の手とも休符で空かない部分に突入したところで
無情にもその風は更に強くなり
その風にモロに煽られた譜面台上の楽譜が
私の両腕から膝上を経由してステージの床に落ちた
。
一瞬動揺してしまい何ヵ所かミスタッチを犯しはしてしまったが
直ぐに気を持ち直して演奏を最後まで遂行する事だけは出来た。
若い頃の本番中に遭遇した「事故」の際にはすっかり気が動転してしまい
「事故」後の演奏がメチャクチャになってしまった事も多々あったが、
人間歳を重ねる度に慎重になるもので
今回の「事故」もぶっちゃけ「想定内」、
やはり声楽の伴奏パートであっても
暗譜しておく事に越したことはないと改めて痛感した。
しかし何故急にステージ上の空調機器が本番中に暴走したのだろう?
恐らく自動制御されていたであろう空調機器が
ステージ上の余りの暑さに気を利かせ、
ハッスルしてしまったのだろうか!?(笑)
多分恐らく舞台袖の舞台係さんが一番にモニター画面でか何かでステージ上の「事故」に気づいて下さり、
手動で空調機器の暴走を止めて下さったからであろうか、
演奏を終えてステージから舞台袖に引っ込もうとする時には
空調機器の暴走は収まっていた。
しかしこれは今回の「事故」当時演奏していた声楽曲の伴奏パートが
比較的音の数も少なくテクニック的にもどちらかと言えば容易な部類に入る曲だったからこそかろうじて成し得た事であって、
これがもし伴奏ピアニスト泣かせの難曲シューベルトの歌曲「魔王」のような終始休符はおろか両手が出ずっぱりの無窮動のような曲であったとしたら
魔王の劇中登場人物の「坊や」が曲の最後で死に絶える前に
伴奏ピアニストの私の方が先に死なずとも演奏行為から「落ちて」しまっていたかも知れない…。
業界ではまことしやかに常々囁かれてはいますが、
やはりステージには「魔物」が棲んでいるのかも知れませんね!
by tn-pf
| 2014-08-29 00:33